採用というのは、難しい業務です。
面接の場では優秀と感じた人でも、いざ現場に行くと全く使い物にならないなんてこともよくあります。
では、そうした事態にならないためには、どういったことに気をつけないといけないのでしょうか。
そのポイントは、応募者の「考える力」を見抜く、と言うところにあります。
目次
本当に雇うべきは「考える力」のある人間
企業が本当に雇うべき人はどのような人でしょうか。
それは、仕事のできる人間です。
では、仕事のできる人間とはどんな人のことを言うのか。
それは、自分で考え答えを導き出せる人のことです。
目の前の事象に対して、答えを探すのではなく、自分なりに対処の仕方を考えていく人が求められます。
これからの時代は、どんどん状況が変わっていきます。
技術の進歩のスピードは速まり、それにともなって社会の状況もどんどん変わっていきます。
そうした状況の中では、その場その場で考え、決断する力が必要です。
なぜなら、そうした状況の中では答えが無いからです。
答えが無いから、仕事をルール化できないのです。
ルールが無い状態で仕事を進めるためには、自分の頭で考えないといけません。
これからの時代に成果を出せるのは、自分の頭で考えられる人間です。
つまり、企業が雇うべき人間と言うのは、考える力を持つ人たちなのです。
「考える力=学力」ではない
考える力というと、頭がいい人というようなイメージを持つかと思います。
しかし、注意しないといけないのが、「考える力がある=学力がある」ということではないということです。
一般的にいう学力と言うのは、決められたルールの中で成果が出せる能力のことです。
学力の高い人は、試験と言うやり方が明確に決められたものであれば、成果を出すことができます。
ですから、ルールの決まった仕事、手順が決められた定型的な作業であれば、学力の高い人は適性があるでしょう。
しかし、そうした決まりきった作業と言うのは、付加価値が低いです。
そういったものは、自社でやるより、外注に回したり、自動化したほうがいいです。
今後はAIにやってもらう、なんてことも可能かもしれません。
いずれにしても、わざわざ高いコストを払って、自社で人を雇う必要はありません。
「優秀な人材=学力の高い人」という思い込みは、日本社会では当たり前になっています。
しかし、上記の理由により、決して「学力が高い=仕事ができる」とは言えません。
従って、採用するべき人間と言うのは、学力が高かったり、ペーパーテストの成績のいい人間はないのです。
経歴や資格に騙されない
「学力が高い=仕事ができる」という思い込みと、同じくらいに信じられているのが、「経歴や資格を保有している=仕事ができる」という思い込みです。
しかし、これも立派な経歴や資格を持っているからと言って、仕事ができるとは限りません。
経歴や資格と言ったものは、武器に過ぎません。
ですが、大事なのはそれを振るう使い手の方です。
どんなに武器が立派でも、使い手が大したことなければ、それは宝の持ち腐れです。
それに武器を与えるというのは、比較的簡単にできます。
しかし、使い手を育てるというのは、それに比べて時間もコストもかかります。
であれば、雇うべきは優れた使い手であると言えます。
もちろん、ここでいう優れた使い手と言うのは、「考える力のある人間」ということです。
仕事ができる人が持っている能力
ここで一度、仕事ができる人とはどういう人かを振り返ってみましょう。
仕事ができるというのは、自分の頭で考えられるということです。
これをもう少し突っ込んで考えると、以下のような要素からなると言えます。
①わからないものをわからないなりに理解しようとする力
②具体的な事象から全体像や一般論を導き出す力
③重要なところがどこかを理解し、そこを外さないように仕事をすすめる力
①については、姿勢とかマインドと言ったところです。
わからないから、理解するのを諦めるのではなく、それでも食らいつく姿勢です。
特に複雑な問題を理解する際には、こうした姿勢が必要になります。
②については、いわゆる抽象化能力、概念化能力と言ったものです。
個々の事象から、全体像や一般論を導き出す力です。
この能力によって、多少状況が異なっても、今ままでの経験を応用して自律的に問題を解決していく事ができるのです。
逆にこの能力がないと、1回やったことしか対処できません。
しかも、1回やったことでも、少し状況が異なると対処できなくなります。
③については、本質を見抜く力と言えます。
本質を見抜くには、大枠を理解する必要があります。
言い方を変えれば、枝葉にこだわらず、目的や前提に立ち返ってものごとが重要です。
この能力があることによって、複雑な状況でも方向性を失わずに、仕事を推進していく事ができます。
どうすれば思考力のある人間を見抜けるか
ここまでで、仕事のできる人に必要な能力がわかりました。
しかし、肝心なのは、それをどうやって見抜くかということです。
では、具体的にどうしたらそうした人を採用することができるのでしょうか。
その方法を見ていきましょう。
抽象的な話を振ってみる
応募者に対し、抽象的な話、概念的な話を振ってみるのは一つの手です。
それに対して、スムーズに対応できるのであれば、思考力が高い可能性があります。
また、それに対してわからないなりにも理解を示そうとする人も、高い思考力を有する可能性、もしくはそうなるポテンシャルを秘めていると言えます。
反対に、そうした抽象論に不快感を示す人間、理解するのを諦めてしまう人は、思考力が低い可能性があります。
加えて、対象を理解しようと食らいつく力も低い可能性があります。
もちろん、それだけで決められるものではありませんが、そのような反応が過剰に見られるようであれば、採用を見送った方が良い結果になります。
グループディスカッションのテーマは絞る
新卒の採用では、よくグループディスカッションが用いられます。
その際に、グループディスカッションのテーマを抽象的なものにしないことが大事です。
たとえば、「人間の幸福とは何か?」とか「会社はどうあるべきか?」など。
こうした抽象的なテーマは、あまり考えなくてもそれなりの発言ができてしまうからです。
そうなると、思考力を見ることが難しいのです。
それだったら、もっとテーマを限定するべきです。
たとえば、A4用紙2枚くらいに会社の現状をまとめ、その状況で売り上げを挙げるにはどうしたらいいか、といった課題をテーマにするのです。
そうすれば、その課題を理解しないと発言できないし、議論に参加できません。
つまり、自然と応募者がわからないものを理解しようとする姿勢を持っているかを試すことができるのです。
正解のない問いをしてみる
正解のない問いをすることで、応募者の思考力を見ることができます。
答えがないのですから、自分で考えるしかありません。
一時期googleの採用などで流行ったフェルミ推定なども有効かもしれません。
もちろん、答えが近いかどうかを見るのではなく、そこにいたる過程に思考力が見られるかどうかを見るのが目的です。
採用側も頭を使うことが大事
思考力と言うのは、なかなか見るのが難しいものです。
テストをしたからと言ってわかるものではありません。
そもそも、これをやったら思考力を見れると言った方法も確立されていません。
そうした中で大事なのが、採用側も頭を使うということです。
どうすれば応募者の思考力を見ることができるかを考えるのです。
そうした工夫によって、はじめて見せかけの人材ではなく、本当に優秀な人材を採用することができるのです。