【築地→豊洲新市場移転】盛り土、地下空間問題まとめ
昨今、巷を騒がせている、豊洲新市場移転に係る、盛り土、地下空間問題。
なんとなく大変な問題なのはわかるけど、
・何が問題となっているのか、いまいちよくわからない
・それによってどんな問題が引き起こされるのかよくわからない
という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、この盛り土、地下空間問題の概要を見ていきたいと思います。
(※本記事は、執筆時点で公開されている情報をまとめたものです。
これが真実というわけではないので、参考程度にとどめておいてください。)
目次
大まかな流れ
豊洲新市場移転に関して盛り土問題、地下空間問題など、いろいろな問題が騒がれています。
しかし、一つ一つの報道だけ聞いていると、なぜそれが問題なのかといったことが見えにくいです。
なので、まずは豊洲新市場移転について、大まかな流れをおさらいしましょう。
なぜ、移転する必要があったのか?
まずは、そもそもなぜ築地の市場を豊洲に移転することになったかということです。
主な原因は、施設の老朽化・狭隘化です。
要は、
・施設が古くなってきて、安全性や衛生面で問題が出てきたこと、
・施設が狭く、また拡張性がないので、取引量の増加に対応できない
ということです。
これらの問題を解決するには、施設の刷新が必要になります。
しかし、現在の築地の施設を改良するのは、時間・コストの面で現実的ではありませんでした。
なので、新しく施設を作る必要があったのです。
参考:なぜ移転整備が必要なの?
なぜ豊洲になったのか?
主に以下の3点から豊洲に決定したようです。
①広い敷地を確保できること
②流通、交通の面で利便性があること
③築地の近くであること
ちなみに、候補地は5つあり、その中で最も条件を満たしていたのが豊洲だったのです。
引用:なぜ豊洲なの?
豊洲市場の土壌汚染問題
このように移転先となった豊洲ですが、大きな問題がありました。
それが、今取り沙汰されている「土壌汚染問題」です。
豊洲新市場予定地は、もともと東京ガスのガス製造工場がありました。
現在は撤去されていますが、それまではガスの製造・供給が行われていました。
そのガスの製造の過程で排出される副産物が、土壌汚染の原因となっているのです。
(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムなど)
なぜ汚染された地区に市場を移転するのか
この土壌汚染問題は、移転の計画が決定した石原都政時代に、既に確認されていました。
それでも、施設の建設を続行したのは、「対策によって十分安全性が保てるから」という判断のもとでした。
対策の概要は以下です。
①地上2mの土を無条件に掘削(地表の汚染物質対策)
②地下の汚染物質の除去(汚染濃度が高い部分のみ)、微生物処理、洗浄処理などの最先端の手法を採用
③液状化対策を実施(砂杭、コンクリート)
④砕石層を敷く(地下水が上がってくるのを防ぐ)
⑤汚染されていない土を4.5m盛る
⑥地下水管理システムで継続的にモニタリングを実施
つまり、法で定められた基準を十分超えている対策がなされているとのことです。
参考:万全な土壌汚染対策
上記の対策によって、安全性が十分に確保できる。
専門家団も含めた判断により、移転場所として豊洲で問題ないとの決定がされたのです。
しかし、実際は対策が十分でなかった可能性
そして小池都政時代、豊洲市場移転を直前に控え、再び内情の調査を行いました。
そこで、十分な汚染対策がされていない疑いが浮上しました。
後程詳述しますが、それが今回問題となっている「地下空間問題」です。
土壌汚染対策が不十分でないとの疑いのため、豊洲市場への移転は延期となりました。
その延期に伴って、様々な問題が発生しています。
もともと移転することでいろいろな計画が進んでいたのですから、当然ですね。
さらに、調査を進めていくうちに豊洲新市場自体にさまざまな問題があることが発覚してきました。
今回の騒動は、
・土壌汚染対策の不備やその他の問題
・そういった対策の杜撰さや不透明さ
・それに伴って引き起こされる副次的な問題
などが複合的に絡み合って、起きているのです。
盛土、地下空間問題について
豊洲新市場問題の流れをおさらいしたところで、本題である盛土、地下空間問題を見ていきましょう。
これは、簡単に言えば盛土、つまり土壌汚染対策がされていなかったことが発覚したという事件です。
そして、その発覚の引き金となったのが建物下に存在する地下空間の存在だったのです。
盛土、地下空間問題の概要
では、地下空間とは何だったのでしょうか。
これは、建物下にある高さ5メートルほどの謎の空間のことです。
では、なぜこれが土壌汚染対策の不備への疑いにつながるのでしょうか。
それを理解するために、今回の土壌汚染対策の概要をおさらいしましょう。
今回の汚染対策は以下のようなものであったと説明されています。
①地上2mの土を無条件に掘削(地表の汚染物質対策)
②地下の汚染物質の除去(汚染濃度が高い部分のみ)
③液状化対策を実施(砂杭、コンクリート)
④砕石層を敷く
⑤汚染されていない土を4.5m盛る
⑥地下水管理システムで継続的にモニタリングを実施
今回の問題となった地下空間は、下の画像のように、建物の真下に広がっています。
以上のことから考えると、地下空間が存在するということは、「⑤汚染されていない土を4.5m盛る」という対策がなされていないことになる。
つまり、十分な汚染対策がなされていないのではないか、という疑問がでてくるというわけです。
もし、これに大して合理的な説明があるのであれば、ここまで問題にはなりませんでした。
しかし、その理由や経緯も不明という状態なので、ますます不安が広がっているというのが現状なのです。
なぜ地下空間が存在するのか
正式な理由はわかりませんが、可能性として考えれるのは、「工期と費用」の圧縮です。
地下空間に盛土をしないとなれば、その分の費用と時間が短縮されます。
また、地下空間には既に建物の基礎が出来上がっているので、その上に建物を建てれば、基礎を工事する時間が短縮できます。
以上のような理由から、地下空間を盛土で埋めずに、そのまま利用したほうが合理的と判断したのではないかと考えられます。
盛土は汚染対策ではない可能性
ここまで、「盛土がされていない→汚染対策が十分でない」という説明をしてきました。
しかし、実は盛土は汚染対策目的ではないという見方も出てきています。
もし、そうだとしたら盛土がされていない(=地下空間が存在する)としても、土壌汚染対策という意味においては問題がないということになります。
その根拠となるのが、盛土はそもそも土壌汚染対策ではなく、嵩上げ目的だったのではないかという見方です。
豊洲はもともと工業地であり港湾なので、船の寄港に合わせて海抜が低くなっていました。
そのままだと、市街化した際に高潮や津波の危険性があるので、嵩上げする必要があったのです。
そのことを説明する際、どうしてそうなったのかは不明ですが、土壌汚染対策と嵩上げ対策を一緒にして説明。
それにより、盛土対策がなされていない=土壌汚染対策が十分でない、という見方をされてしまっているのです。
もちろん、これは東京都からの正式な説明があったわけではなく、あくまで推測に過ぎません。
このような可能性もある、という程度の認識でとどめておくのが無難でしょう。
参考:豊洲市場の盛り土は実は不要だった?なぜ盛り土は必要となったのか?
参考:豊洲市場の盛土の話 – Togetterまとめ
まとめ
たしかな情報が出ていないので、何とも言えないですが、今回の問題点は以下でしょう。
・地下空間の存在の経緯、理由が不明
・地下空間の存在によって、どのような問題があるのかが不明
・汚染対策がどうなされたのか、その対策は十分に安全と言えるのか不明
様々な方針決定の経緯に関する情報が残っておらず、不明な点が多すぎるというのが今回の大きな問題点です。
あまりにも不明な点が多すぎるので、不安になる。
不安になるから各々が勝手に解釈し、あらぬ情報が飛び交う。
それによって、さらに不安が増大する。
という悪循環に陥っているようです。
移転に際してもそうですが、移転先の市場自体もいろいろな問題を抱えているようです。
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築地市場関係者も今回の件が長引けば長引くほど、損害が増えていきます。
さらに今回の場合は、東京オリンピックの開催も絡んでいます。
つまり、国内の問題ではなく、世界にも影響を与えかねない問題なのです。
恐らくまだまだ問題は出てくるでしょうが、早急な対策、解決を願ってやみません。
2016/11/02追記:地下空間問題、責任者の特定が完了
豊洲市場の地下空間問題の責任者8名が特定。
速やかに懲戒処分を決めるとのこと。
地下空間が設けられた経緯としては、部課長級の会議にて「モニタリング空間が必要では」との意見が出たため。
その決定が発注した設計にも反映されたと見られている。
参考:豊洲市場の盛り土問題で8人の責任者を特定、石原氏は「ほぼノー回答だった」と小池百合子知事
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