先入観や思い込みというのは厄介なものです。
一度自分で「こうだ!」と思ってしまうと、その考えにとらわれてしまいます。
そのせいで、目の前の事が見えなくなったり、普段では考えられないような判断ミスを犯してしまいます。
では、どうすれば先入観にとらわれずに行動することができるのでしょうか?
今回は、先入観にとらわれない方法について見ていきます。
目次
先入観や思い込みの正体
「先入観は、持たない方がいい。」
わたしたちは、そう理解しながらも、知らず知らずのうちに先入観を持ってしまいます。
では、そもそも先入観とは何なのでしょうか?
先入観にとらわれない方法を見る前に、まずは「先入観とは何か」について考えていきましょう。
先入観というものを正しくとらえることで、それへの有効な対策を考えることができるからです。
人から聞いた話を信じてしまう
先入観の例の一つとして、「他人から聞いた話を信じてしまう」というものがあります。
人から聞いた話というのは、その人のフィルターがかかった話です。
100%正しいという保証はありません。
たとえば、ダイエットに成功した話があるとします。
その話では、食事量を変えずに、食べる時間を変えたら痩せたというものです。
たしかに、それで痩せられるかもしれません。
ですが、それが自分にも当てはまるかどうかはわかりません。
その人がたまたま不健康な時間に食事をしていて、それを普通の時間にしたから、痩せられただけかもしれません。
例えば、深夜に採っていた夕食を、18時ごろに変えたなど。
だとしたら、痩せるのも当然です。
しかし、毎日適正な時間にご飯を食べているあなたが時間を変えたところで、痩せるとは限らないでしょう。
もしかしたら、時間を変えたことによって、逆に体重が増加してしまう可能性だってあります。
食事の時間を変えるよりも、食事の量を変えた方が、あなたにとっては有効かもしれません。
他人の話と言うのは、あくまでその人の場合の話です。
体質、生活習慣、食事の量、年齢、性別…
このような条件が全て同じであれば、当てはまるかもしれません。
逆に言えば、そうした条件が違うのに、その話を信じても効果を出すことはできません。
それにも関わらず、わたしたちはこういった聞いただけの話を鵜呑みにしてしまいます。
特にそれが権威ある相手だったりすると、この傾向は顕著です。
そして、その話をもとに行動を起こし、失敗するのです。
前提を無視して、あるいは都合よく作り変えて、相手の話を信じてしまう。
これも先入観の一つの例です。
一部で全てを決めつけてしまう
一部分だけを見て全てを決めつけてしまうのも、先入観の一つの例です。
たとえば、ある特定の人だけのふるまいを見て、全体がそうだと結論付けてしまうことが挙げられます。
たまたまマナーの悪い外国人を見て、外国人はみんなマナーが悪い、と結論づけるようなことですね。
その外国人はたまたまマナーが悪かっただけです。
他にもたくさんマナーのいい外国人がいたはずです。
それにも関わらず、その一人を見た時の印象だけで全体を決めつけてしまうのです。
また、第一印象だけでその人を判断してしまうなどもそうですね。
第一印象で愛想が悪かったり、身なりが気になったりしたので、その人は悪い人だと決めつけてしまう。
でも実は、付き合ってみたらいい人かもしれません。
愛想が悪かったのは、緊張していたからかもしれません。
身なりが気になるのは、準備の時間が無かったからかもしれません。
そうした、いろいろな可能性があるにも関わらず、自分が見たその一面だけにとらわれてしまうのです。
このように私たちは、ものごとの一部だけを見て、全体をわかったような気になります。
これも先入観の一つの例と言えるでしょう。
過去の経験にとらわれている
他にも、過去からの類推などが挙げられます。
「この状況は、以前の状況と似ているから、同じようなことが起こるだろう」とか、
「この人は、あの人と思考のパターンが似ている。きっとこう言ったら同じ反応をするだろう」などです。
しかし、過去の状況は過去の状況です。
今の状況と似ていても100%同じというわけではありません。
それにも関わらず、私たちは自分の類推を過信してしまいます。
たとえば、倒産してしまう会社と言うのは、過去の栄光にすがっていることが多いです。
過去に上手くいったパターンだからと言って、それに固執してしまう。
たとえば、液晶テレビがコモディティ化し、発展途上国と競争しても勝てない状況なのに、過去にそれが売れたからと言って、それを販売することに固執する、などですね。
状況や環境は、その時と大きく変わっているのに、それを無視して強行してしまうのです。
人間というのは、自分の経験を必要以上に重要視していしまいます。
成功した、上手くいったという事実のみに焦点を当て、なぜそれが上手くいったのかというところまでは考えないのです。
そして、これは逆も言えます。
過去に失敗したから二度とそれをしないようにするというものです。
これだって状況が違えば上手くいったかもしれません。
もし、今その方法を取れば上手くいくかもしれないのに、自分の過去の失敗にとらわれ、その方法を取れないことだってあり得ます。
このように、過去の経験にとらわれ、現状を上手く把握できないというのも先入観の一つの例です。
先入観とは不確実なものを絶対視してしまうこと
ここまで、いろいろな先入観のパターンを見てきました。
これらに共通することは何でしょうか。
それは、本来は参考情報程度にするべきものを絶対のものとしてしまうことです。
人から聞いた話は、数ある情報源のうちの一つにしかすぎません。
第一印象や、過去からのパターン類推も同じです。
無数にある中のわずかな情報だけにとらわれてしまう。
そして、それが絶対に正しいと考え、他の可能性を排除してしまう。
それが、先入観の正体なのです。
先入観にとらわれるとどうなるか?
先入観というものが何なのか理解できました。
では、次に先入観にとらわれると、どのような問題が出てくるのかを考えていきましょう。
先入観にとらわれてしまう、一番のデメリットが、現実を正しく見れなくなることです。
先入観とは、ある一情報だけにとらわれてしまうことです。
もし、その情報が正しければいいですが、間違っていたらどうでしょうか?
全ての推測が、その情報をもとに組み立てられています。
ということは、その情報が間違っていれば、組み上げた推測がすべて間違っているということになります。
現実の世界に対して、まったくの見当違いの思い込みをしているということですね。
たとえば、ある人から「今後はIT業界が景気が良くなる。今就職するならIT業界しかない!」という話を聞いたとしましょう。
そして、その情報を信じてIT業界に就職したとします。
しかし、その情報が正しいという保証はどこにもありません。
その人の周りがそうだけかもしれません。
その人も誰かから聞いたり、メディアから仕入れた情報かもしれません。
景気がいいのは、上流の会社だけで、末端の作業員は相変わらず低賃金で働かされるかもしれません。
そのような状況の中で、IT業界に就職しても、望むような人生は送れないでしょう。
つまり、ある一つの情報だけを鵜呑みにして、それを前提に決めてしまったことにより、全てが間違った方向に行ってしまったのです。
間違った情報をもとに行動すれば、当然返って来る結果は悲惨なものになるでしょう。
そうならないためにも、先入観や思い込みにとらわれないことが大事です。
先入観にとらわれない方法!
先入観にとらわれると、現実を上手く見ることができなくなります。
それは、現実の世界に上手く対処できないことを意味します。
では、どうすれば先入観にとらわれずに済むのでしょうか?
そのために重要なのが、以下の3つです。
・本当にそうかを考える
・情報源を複数持つ
・全ては可能性に過ぎないことを意識する
詳しく見ていきましょう。
本当にそうか論理を深堀してみる
先入観にとらわれないために、まずは「自分の考えが本当に正しいのか?」をもう一度考え直しましょう。
その時のコツは、自分の考えを批判的に見ることです。
「Aという情報をもとにBという推測を立てたが、本当にそうなのか?」
「絶対にBとは言えない以上、Cという可能性もあるんじゃないか?」
「そもそも、なぜBだと思ったのか?」
などと考えていくうちに、思い違いに気づくことができます。
自分の意見を批判的に見るためには、その決断をした理由を深堀していくといいです。
たとえば、ある証券会社を利用することを決めたとします。
では、なぜその会社に決めたのかを全て洗い出してみるのです。
知人に勧められたから、対応が良かったから、実績があるから…
これらが、決断に至った理由です。
これが出そろったら、さらにそれらの理由に対し「なぜ?」を考えてみましょう。
なぜ、知人に勧められたから、そこに決めるのか?
知人は本当に信用できるのか?
知人はそもそもその会社を利用して利益を上げているのか?
何かキャンペーンが開催されていて、そのために勧誘されているのではないか?
このように他の理由に対しても、「なぜ?」を深堀していきます。
そうする中で、自分の決断やその根拠を冷静に見つめることができるのです。
そうすれば、冷静な判断ができるので、先入観にとらわれることもなくなります。
結論が出たら、一度それを精査してみると、結論の間違いや弱い部分を見つけることができます。
それによって結論を組み替えたり、より強力にすることができます。
自分の決断に至った論理を見直すことが大事ということですね。
情報源を複数持つ
先入観とは、無数にある中の一つの情報を過信しすぎてしまうことが原因でした。
それを防ぐには、情報源を複数持つのが一番です。
情報源が増えれば、一つの情報にとらわれる可能性は低くなります。
そのために、いろいろな角度から情報を集めましょう。
自分で得た情報、人から聞いた情報、メディアから得た情報などなど。
情報収集の経路を増やすことが大事です。
情報収集で有効なのが、相反する立場からの意見を両方聞くというものです。
たとえば、何か商品を購入するときにこの手法が役に立ちます。
何か商品を買う時に、高評価をしている人の意見だけでなく、低評価をつけている人の意見も見るのです。
そうすることで、その商品のいい点と悪い点の情報を得ることができます。
このように情報チャネルを増やすことで、様々な角度から見た情報を得ることができます。
上の例では、商品購入でしたが、会社や保険、病院、住まいを決める時など、人生の重要な決断の時も同じです。
色々な情報があれば、一つの情報に依らないため、精度の高い判断が下せるのです。
先入観にとらわれないために、まずは色々な経路から情報を得ましょう。
意識的に情報源を増やすことで、一つの情報にとらわれる可能性が大幅に下がります。
全ては可能性に過ぎないことを意識する
推測はあくまで推測です。
どんなに頑張っても100%正確に推測することなど不可能です。
また、集められる情報にも限りがあります。
その時点で、ある程度の先入観にとらわれているのです。
どんなに頭に汗をかいて考えても、情報をたくさん集めても、完全に先入観から逃れることはできないのです。
ですから、そのことを理解し、推測はあくまで推測に過ぎないということを意識しましょう。
ある程度まで推測したら、あとは自分でやってみて確かめるしかないのです。
どんなに準備をして決断しても、失敗するときは失敗します。
大事なのは失敗しない事ではなく、失敗した時にリカバリーできることです。
推測というのは、ある程度不確実性を持つものです。
その不確実性をしっかりと把握できていれば、起こりうる失敗と言うのは予想できるのです。
たとえば、転職を例に考えてみましょう。
その会社に勤める知人から、その会社のことを聞いて、入社を決めました。
その会社は、残業も少なく、離職率も低い。
それに有給取得率も高く、年収も業界の平均よりは高いそうです。
これだけを聞けば、とても魅力的な会社に見えます。
それに内部の人間の情報なので、かなり信憑性は高いです。
しかし、ここにも不確実性は存在しています。
その話は、その人が在籍している部署の中だけの話かもしれません。
ある部署では、離職率も高く、求職者も多いなど、とてもいいとは言えない労働環境で働いているかもしれません。
あるいは、その人は話を盛っているのかもしれません。
社員紹介で入社した場合、本人にインセンティブが与えられる可能性もあります。
それが欲しいがために、話を盛っているということも可能性としては考えられます。
このように、不確実性を考えていけば、リスクは予想することができます。
リスクが予想できれば、それに対して備えることができます。
上の例で言えば、その会社が駄目だったときに、すぐに転職できるようなコネクションを作っておくとか、貯金をしておくとか対策が講じられます。
情報を鵜呑みにして、何も対策していない時と比べれば、失敗した時のダメージを大幅に軽減できます。
全ては可能性に過ぎないことを意識すれば、その不確実性に対するリスクを想定することができます。
自分の判断において、「確実なものは何なのか?そして不確実なものは何なのか?」を考えることが重要です。
そうすることで、一つの情報に依って先入観にとらわれるということもなくなるのです。
今回のまとめ
・先入観とは、偏った情報に思考がとらわれてしまうこと。
・先入観は、現実を見る目を狂わせ、間違った行動を引き起こす。
・先入観にとらわれないための方法を知り、意識しよう。