石炭から石油へ。エネルギー革命がもたらした惨事から学べること
昨今、エネルギーの転換が進んでいます。
ガソリン車から電気自動車への変遷。
それに伴い、石油業界の再編が進んでいます。
また、シェールガスの採掘方法が確立されたこと。
石油の価格高騰に伴う石炭への回帰。
このようなエネルギーの変化は、これからも続くでしょう。
歴史を見てみると、エネルギーの変遷は時に惨事をもたらします。
エネルギーの変遷によって、社会の構造や、経済の仕組みが変わります。
それにより、職を失う人が出てくるからです。
これらのことは、当然近い将来起こり得ることです。
では、過去にどのような惨事があったのでしょうか?
今回は、エネルギーの転換と、それによってもたらされた惨事についてみていきます。
石炭→石油への転換
今では、一般的な燃料となっている石油。
しかし、これが一般的になったのは、戦後のことです。
それまでは、燃料として一般的に使われていたのは石炭でした。
ですから、石炭を扱う会社や炭鉱はたくさんありました。
そして、それに従事する人達も大勢いました。
石炭に関係する仕事が、経済を支えていたわけですね。
しかし、戦後まもなく(1950年頃)、中東で石油の採掘方法や精錬方法が確立されました。
これにより、石炭よりも安価で使用することができるようになったのです。
それに伴い、石炭産業は大規模な合理化や人員削減を行ったのです。
つまり、リストラが行われたのです。
エネルギー転換による混乱
エネルギー転換により、石炭の需要が減少。
それに伴い、石炭産業はリストラを敢行するしかありませんでした。
当然これには、労働者からの激しい反発がありました。
当時、大きな闘争となったのが、1959~1960年に起こった三井炭鉱(現・日本コークス工業)での労使対立です。
会社の人員整理に対し、労働組合が反対闘争を起こしたのです。
両者の間はもつれにもつれ、ついに無期限ストが実施されました。
これは会社に対してダメージを与えることができますが、同時に労働者にとってもダメージがあります。
スト中は給料が出ないからです。
ストが長引くにつれて、労働者は疲弊。
労働組合は、内部分裂を始めます。
ストを断固として決行する強硬派と、働いて給料をもらいながら会社との調和を図ろうとする穏健派に分裂したのです。
その事態を見た会社は、穏健派のみに会社で働く許可を出しました。
労働組合の内部分裂を助長したのですね。
これにより、労働組合の内部闘争は激化。
自衛隊や暴力団が介入する事態に発展しました。
そして、その衝突により、ついに死人が出てしまいました。
エネルギーの転換により、大きな混乱がもたらされたのです。
惨事の収集
エネルギー転換による惨事。
ついに、死者を出す事態となってしまいました。
さらなる混乱、事態の悪化を恐れ、当時の池田勇人内閣は事態の鎮圧を図ります。
中央労働委員会に、会社と労働組合の仲裁を依頼したのです。
事態に収拾をつけられなくなった会社と労働組合も、これは渡りに船とその仲裁を受け入れます。
これにより、会社は指名解雇を撤回しましたが、労働者は自発退職という形で退職することになりました。
結局、労働者の解雇を取り下げることができなかったのです。
実質的には、労働者の敗北と言えるでしょう。
しかし、なんでも会社の思い通りにいかないということを思い知らせたという意味では一定の功績はあったのかもしれません。
当時のニュース映像
三井三池労働争議 1,200人を超える組合員の指名解雇に端を発した三井三池の争議で、1月25日、組合側は会社側のロック・・・ https://t.co/m0rORyW8Ia
— ポポロン@b00k.jp (@b00kjp) 2017年5月20日
当時のニュース映像です。
組合内の分裂闘争は凄まじく、組合員の会社に対する妨害工作する様は圧巻です。
当時は一つの会社で死ぬまで働くのが当たり前でした。
その会社に入ったら一生安泰という気持ちが従業員にもあったのでしょうね。
それが急に裏切られたのだから、会社に対する憎悪は今では想像できないほど深いものだったのでしょう。
それに、転職も一般的ではありませんでした。
だから、会社を追いやられた後、どう生活していいかもわからなかったのでしょう。
そうした背景があって、闘争がここまで激化したのでしょう。
私たちが、この惨事から学べる事
エネルギーの転換による、社会の混乱の歴史を見てきました。
これらを見て、私たちはいったい何を学べばいいのでしょう?
会社や政府に言えること
そもそも、この労使間の闘争では、労働者側に勝ち目はありませんでした。
エネルギー転換によって会社から仕事がなくなっているのに、従業員を減らすなというのは無理な話です。
もしその状態で従業員を減らさなかったら、結局会社はつぶれてしまうので、全員共倒れになってしまいます。
だったら、一部の人間を切り捨ててでも生き残るというのは、当然の選択です。
会社側に落ち度があったとすれば、解雇する人間のその後をバックアップするような考えがなかったことでしょう。
いらなくなったから解雇する、では人間は納得できません。
その後に少しでも力になろうという姿勢があれば、ここまで闘争が激化することもなかったのではないでしょうか。
会社側に言えるのは、エネルギー転換によって大量の人員整理が必要になることを、早期に予測すること。
解雇する人員のバックアップを早い段階で考えることが必要だったと思います。
ただし、これは会社にとって一切メリットがないので、自然とこのような取り組みが行われるとは考えにくいです。
ですから、そのような強制力を政府が作り出す必要があります。
そして、政府自身も将来を予測し、それへの対策を考えるようにしないといけません。
私たち個人に言えること
仕事がなくなっている会社に、解雇をするなというのは、沈みかけている船に「乗せ続けろ!」といっているのと変わりません。
そんなことをしたら、みんな沈んでしまって誰も助かりません。
そして、そのような状況を誰かが助けてくれるはずもありません。
政府や会社に期待してはいけません。
ですから、私たちは、船が沈んでも大丈夫なように準備をしないといけません。
具体的には、
・会社が潰れる予兆を察知するために、アンテナを高く張る。
・潰れても生きていけるように、力をつける。
ことが必要です。
常に情報を仕入れ、世の中の動き、会社の動きを見ること。
収益源を多角化し、会社だけに依存しないようにすること。
これが重要です。
これを意識しないと、沈みかけの船に乗せ続けろと訴えるような、無意味な労働闘争が始まってしまいますからね。
特に今後は、技術革新のスピードがどんどん速くなっていく事が予想されます。
そのたびに、こんな闘争をしていたら身が持ちません。
しかも、もともと勝ち目の無い闘争です。
万一、勝ったとしても、その会社はいずれ潰れます。
そんなことに時間を使わないためにも、自分自身で生きていけるような力をつけることが重要ではないでしょうか?
今回のまとめ
・技術の変化は社会に大きな影響を与える。
・その影響によって、労働者は振り回されることになる。
・振り回されないために、私たちは力をつける必要がある。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇 (文春文庫)