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公開日:
最終更新日:2016/06/19

戦力?軍隊?自衛隊とは一体何なのか

日本を守っている存在である、自衛隊
しかし、自衛隊とは一体何なのか、と聞かれると上手く説明できないのではないでしょうか?

「軍隊のようであるが、軍隊ではない。」
「戦闘力を持っているが、敵とは戦わない。」
など、断片的な知識としては理解している。
しかし、一体なぜそうなっているのかは、よくわからない。
というのが、正直な感想ではないでしょうか?

現在の国際社会は、アメリカが圧倒的な力を持ち、それによって他国が監視されている状態です。
そのような状態から、しばしばアメリカのことを「世界の警察官」と言います
しかし、将来的にはアメリカの国力は衰え、「世界の警察官」としての役割を果たせなくなるかもしれないというデータがあります。
そのような状態になった時、日本は自分で自分の身を守らなくてはいけなくなります
その時に、日本国民自身が「自国を守る存在である自衛隊について知らない」ではどうしようもありません。

また、日本は戦争によって、二度と戦争をしないという教訓を得ました。
世界の状況が変わっていく中で、この思想を貫くには、やはり戦う力である自衛隊について知る必要があります。
先人たちが痛みを伴って得た教えを守るためにも、自衛隊について知る必要があります。

変わりゆく世界情勢の中で、日本を守っていくため。
先人が得た「戦争を2度としない」という思想を貫くため。
まず、私たちは自衛隊について知る必要があるのではないでしょうか?

そこで今回は、自衛隊とその歴史についてみていきます。

戦力 軍隊 自衛隊

自衛隊の起源

自衛隊とは、何なのか?
それを知るためには、自衛隊の起源を知るのが一番です。
そもそも自衛隊とは、なぜ生まれたのでしょうか?

話は終戦直後までさかのぼります。
当時の日本は、連合軍に敗れ、アメリカの統治下にいました。
GHQ指導のもと、改革が行われていたのですね。

ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発します。
背景には、資本主義国と社会主義国による冷戦がありました。
社会主義国を少しでも増やしたい中国、ソ連が北朝鮮をそそのかし、韓国に攻撃させたのです。
アメリカからすれば、韓国が社会主義国に墜ちてしまうのは、何としても防ぎたいところです。
そのため、日本に駐留していた軍隊を派遣します。

しかし、そうなるとアメリカの間に、
「米兵がいない間に、日本が社会主義国に墜ちるのではないか?」
「日本内部で社会主義革命が起こるのではないか?」
という不安がよぎりました。
日本が社会主義国化するのを恐れたのです。

そうして生まれたのが、自衛隊の前身である、警察予備隊です。
日本は、憲法で軍隊を持つことができなかったので、このようなかたちになりました。
その後1954年には、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊が出来上がり、今の自衛隊の体制が出来上がります。

このよに、自衛隊とはアメリカの都合でできた組織だということが言えます。

自衛隊は軍隊なのか?

自衛隊が、アメリカの要請によってつくられたことがわかりました。
では、自衛隊とは一体何なのでしょうか?
軍隊なのでしょうか?

日本国憲法では、自衛隊は軍隊とはみなされていません
なぜなら、日本国憲法では、軍隊、すなわち戦力を保持することが許されていないからです。
日本国憲法第九条で、以下のように決められています。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記されていますね。
日本は、たてまえでは軍隊を持っていないことになっているのです。
あくまで、「自国に降りかかる火の粉を振り払うための自衛手段に過ぎない」というのが日本国憲法の解釈なのです。

自衛隊は、自衛の手段なので、集団的自衛権を持ちません。
集団的自衛権とは、以下のようなものです。

他国と仲良しグループを作り、もし仲間が攻撃されたら、自国が攻撃されたとみなし、攻撃された仲間とともに敵を攻撃することができる権利。

それに対し、個別的自衛権というものもあります。

自国が攻撃されたとき、自国を防衛するために戦う権利を「個別的自衛権」といいます。

自衛隊についてまとめると、以下のようになります。
・実態はほとんど軍隊だが、憲法上軍隊ではない。
・そのため、軍隊ではなく、自衛隊と呼ぶ必要がある。
・交戦権を持たない。
・ただし、攻撃されたら、自衛のために攻撃し返していい。

自衛隊の転換期

「自衛隊は自衛の手段に過ぎない」ということがわかりました。

しかし、自衛隊は他国の紛争鎮圧の援助に行ったりしていますよね。
イラクに出兵していたこともあります。
では、なぜ自衛の手段に過ぎない自衛隊が、他国の紛争の鎮圧の援助を行っているのでしょうか?

これには、自衛隊の在り方を根本から変えるような出来事がありました。
それが、湾岸戦争です。
この戦争は、1990年にイラクが隣国クウェートを侵略したことがことの発端です。
それを受け、翌年米国を中心とする多国籍軍がイラクを攻撃、クウェートを解放しました。
日本は、当時外国に自衛隊を派遣することができませんでした。
直接援助をすることができなかったので、多額の投資をすることで貢献しました

クウェートは解放後、米国の新聞に感謝広告を掲載しました。
クウェートの解放に尽力してくれた国々に対して、感謝の意を述べたのです。
しかし、そこに日本の名前はなかったのです。

この出来事をきっかけに、
「実際に汗を流さないと、世界は認めてくれないのでは?」
という世論が高まりました。
「自衛隊も貢献活動に参加すべき」
このような国民の意見を受け、国連平和維持活動協力法(PKO協力法)が成立しました。
これにより、自衛隊は世界各地に派遣されるようになります。

自衛隊の曖昧な定義

PKO協力法によって、自衛隊は国際的な貢献活動に参加することができるようになりました。
しかし、問題があります。
それは、自衛隊が個別的自衛権しか持たないことです。

個別的自衛権とは、「自分が攻撃されたら、攻撃し返していい」というものでした。
この個別的自衛権が、自衛隊を危険にさらす可能性があるのです。
たとえば、貢献活動中に味方の軍隊、たとえばアメリカが攻撃されたとしましょう。
この場合、この攻撃によって日本も被害を受けると判断された場合、個別的自衛権が発動します。
直接攻撃を受けたわけではないが、被害を受けると判断された場合には、反撃をしてもいいのです。

しかし、このルールがまた厄介です。
何をもってして、被害を受けるかもしれないと判断するのでしょうか?
判断を迷っているうちに、本当に攻撃されてしまうかもしれません。
あるいは、アメリカにいいように使われて、必要以上に戦闘を行うことになるかもしれません。
自衛隊の定義があいまいなことが、自衛隊や日本を窮地に追い込む可能性もあるのです。

今話題になっている、「自衛隊に集団的自衛権を認めるかどうか」というのもこのあたりのことが関係しているのかもしれません。
ただ、重要なのは、集団的自衛権を認めることなのでしょうか?
「自衛隊自身や日本を守るために、柔軟な動きができるようにすること」
「他国のいいように使われないようにすること」
本当に大事なのはこれらのことです。

国際社会の中で、いいように使われないためにも、自衛隊がどうあるべきかを考えていく必要があるのではないでしょうか?

今回のまとめ

・自衛隊はアメリカの都合で生まれた。
・自衛隊に認められているのは、個別的自衛権のみ。
・PKO法により、自衛隊は国際貢献活動に参加できるようになった。
・自衛隊の曖昧な定義が、自衛隊や日本を危険にさらす可能性がある。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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