b00k.jp ~積み上げ式読書ノート~
公開日:
最終更新日:2016/06/19

人工知能~期待と失望の歴史~

最近人工知能がもてはやされていますが、実は過去にも人工知能ブームがありました。
人工知能が世界を変えるという期待をもって、そのブームが起こりました。
しかし、そのどちらも人工知能の限界が露呈し、その限界に人々が失望することでブームが終わっています。
なぜ人工知能ブームが起きたのか?そして人工知能にはどのような限界があったのか?
今回は、それらをふまえて人工知能の歴史についてみていきます。

人工知能の歴史

過去2回のブーム

人工知能のブームは過去に2回起こっています
1回目は50~60年代に起こった推論・探索ブーム。
2回目は80年代に起こった、エキスパートシステムブーム。
どちらも、人工知能に対する期待とともに起こりましたが、人工知能では「現実の問題を解決することはできない」という失望によって終わっています。
では、それぞれのブームはいったいどのようなものだったのでしょか?

第一次ブーム

第一次ブームは、コンピュータの推論・探索の能力に対する期待から始まりました。
推論・探索とは、場合分けのことです。
たとえば、迷路から正解のルートを導き出すという問題があるとします。
この問題を人工知能は、総当たりで解決します
あるルートで右に行った場合、左に行った場合、その先の分岐で右に行った場合、左に行った場合…
といったように全ての場合をシミュレートし、正解を導き出すのです。
しかし、この方法にはいくつかの欠点がありました。

1つ目は、場合分けが多くなると対応できないことです。
迷路のように決まりきった問題ならば、場合分けはそれほど多くはなりません。
しかし、チェスのように相手がいる場合は、相手の手も考えなければならないため、すぐに場合分けが天文学的な数字になります。
そのような膨大な場合分けを扱うのは非常に時間がかかり、現実的ではありません。

2つ目は、イレギュラーに弱いということです。
たとえば、迷路から正解のルートを導き出すためには、ゴールが必要です。
しかし、その迷路にゴールがなかったらどうでしょうか?
たとえば、同じところをぐるぐる回るような迷路だった場合、場合分けを永遠に繰り返すことになります。
そうならないためには、前提となる迷路が必ず正しいことや、例外処理(同じところに来たら場合分けをやめるなど)を記述しないといけません。

つまり当時の人工知能は、限定された環境の中で、限定された問題を解くことしかできなかったのです。
そのため、現実の問題解決には使えないということがわかり、第一次ブームは幕を閉じました。

第二次ブーム

第二次ブームの火付け役は、エキスパートシステムでした。
エキスパートシステムとは、人工知能に専門家の知識を教えることで、専門的な問題を解決しようというものです。
たとえば、人工知能に法律の専門知識を与えて、弁護士の仕事をしてもらうというような発想です。
実際、エキスパートシステムはかなり複雑な問題を解決することができました。

しかし、これにも問題がありました。
それは、知識を維持管理していくのに非常に労力がかかるということです。
ルールが数百程度であれば、維持管理もそこまで大変ではありません。
しかし、現実の問題を解決しようとなると、数千、数万それ以上のルールが必要になってきます。
これだけの数になると、互いが干渉し、正常に動かなくなる可能性もあります。
また、正常に動くことを確認するのにも大変な労力を要します。

また、ルール複雑さにも限界がありました
たとえば、患者の症状を診断する人工知能で「熱があれば風邪と診断する」というルールがあるとします。
この際、患者の状態が「熱があり、かつ関節に痛みがある」という場合、関節の痛みについてのルールはないため、熱の有無だけで診断を下します。
このように、人間ならば明らかにおかしいと思うことも、気にせず診断してしまうのです。
これを回避するためには、抜け漏れのない完璧なルールを作る必要がありますが、そんなルールを作るのは不可能です。

このように、複雑な処理ができるようになったが、まだまだ限定された問題しか解決できず、そのためのルールを作成するのに膨大な労力と時間がかかるという欠点がありました。
そのため、適用できる範囲も狭く、またも人々の失望とともにブームは幕を閉じていきました。

これからの人工知能

以上のように、人工知能はその可能性に期待され、限界が露呈すると失望されるということを繰り返してきました。
その原因は、現実の問題を解決できない。実用できる範囲が非常に狭いことでした。

しかし、このような歴史があるにも関わらず、昨今再び人工知能に注目が集まっています。
それは、現実の問題を解決できないという限界を突破できる可能性が表れたからです。
なぜ、今そのような可能性が出てきたのでしょうか?
それによって人工知能はどのような進化を見せるのでしょうか?
次回は、これからの人工知能の可能性についてみていきたいと思います。

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カテゴリー: IT


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